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旧車の価値を落とすことなく、ナックルを“再生向上”させるサンダンス流オーバーホール術とは(その2)

前回のブログでは当社でナックルをオーバーホールする際、インテーク側にティン(細い)ステムを採用したオリジナルの “T-SPECハイフローバルブ”  を使用することを紹介させていただきましたが、もちろんそれを受け止めるバルブガイドもサンダンスが独自の技術で製作した “T-SPEC” ガイドを採用しています。上写真をご覧になればお分かりのとおり、ノーマルタイプに比べてガイド自体の外径も細く、エアフローの向上にも貢献します。

鋳鉄製のヘッドを採用ゆえナックルヘッドはバルブガイドも鋳鉄製を使わなければならないのですが、これとて純正のマニュアルどおりにそのままノーマルスペックのものを使用しても様々な問題が生じることになります。

たとえば多くのショップはナックルをレストアする際、バルブガイドとガイド穴を密着させようという狙いから、物凄いキツい穴に太いガイドを入れることが見受けられますが、そうすることによってヘッド自体にヒビが入ってしまうトラブルが起こることも少なくありません。またブロンズ製のガイドを使うと鋳鉄ヘッドとあまりに膨張率が違う為、使用しているうちにガイド自体が内側のほうに伸縮(細くなり)し、抜けてしまう問題も生じます。

では当社サンダンスではナックルをオーバーホールする際、どのようなバルブガイドを使用するのか? その解答が上の写真にあるとおり、黒鉛の多いダグタイル鋳鉄製ガイドの表面に銅をコーティングしたものを採用し、その上で化学合成油対応の特注ガイドシールを装着しています。

また鋳鉄ヘッドの場合、オイルを切りすぎるとアルミヘッドに比べて熱を持ちやすい傾向があるゆえ、バルブガイドにシールを付けたがらないショップもありますが、当社サンダンスは違います。
それを簡単に説明すると「オイルを最小限しか食わさないよう絶妙に調整したオイルシール」を装着するとでもいえばいいでしょうか。
当社サンダンスの場合、化学合成油対応のオイルシールを装着するにしてもEVOやショベルのようにシールにスプリングを付けた状態だとオイルが切れすぎてしまうので、あえてスプリングを取り外し、その上でEX側のシールには少しだけ切り込みを入れ、最小限の量しかオイルをくわないようコントロール。鋳鉄ヘッドゆえ熱を持ちすぎるとバルブステムが焼き付いてしまう問題に対して、このような手法で対処しています。

この “T-SPECバルブガイド” に関しては現在、絶賛発売中の書籍 “ハーレー・ダビッドソン ダイナミクス(マガジン・マガジン刊 定価3,960円)” でも紹介させていただいているのですが、上にある図のとおり鋳鉄製のガイドに極厚銅メッキを施し、密着性と放熱性を向上。あたかもアーモンドチョコレートのように堅いアーモンドを柔らかいチョコレートでコーティングしたような構造となっており、適正なクリアランスで圧入しても絶対的な密着性を実現するものとなっています。

鋳鉄製のガイドでありながらバルブが焼き付きづらく、熱も持ちづらいこの構造は世界でも例がない、というよりサンダンスのみの独自の技術であり、絶対の自信を誇る技術提供サービスとなっています。

さらに熱とオイルを適切にコントロールする為、当社のナックル再生向上サービスでは上の写真のとおりガイドのリテーナーもシリコンブロンズ製に変更した上でOリングを付属。その上でリークレスタイプとなっています。

この放熱性の高いブロンズ製リテーナーによってバルブスプリングの熱をヘッドの方に逃がすのと共にバルブスプリングから出る鉄粉も抑制。バルブスプリングというのは上下に動く際、ツイスト(ねじれながら)しながら摺動しているのですがリテーナーをブロンズ製にすることによって滑りが良くなり、スプリングとリテーナー間の動きもスムースになり、スプリングへの負担も少なくなっています。

またノーマルのブリキ製カバー下に位置する紙製のガスケットはヘタリづらい銅製の “T‐SPEC ロッカーカバーベースガスケット” とし、長寿命化。フッ素ラバーのOリングを備えた削り出しのリテーナーと併用することでオイル漏れを完璧に防ぐ構造となっています。

たとえばオイル漏れを起こしている旧車を指して「オイルが入っている証拠」などと言い、それを許している風潮が残念ながらハーレーの業界にはありますが、ダラダラとオイル漏れを起こしながら走っている車両はあえていえば血を流しながら走っている生き物のようなもの。それが良かろうハズはありません。

旧車が元から抱えている欠点を改善し、それをさらに性能向上させ、再生の手を施すサンダンスの流儀がこのブログから少しでも皆さまにお伝え出来れば幸いです。

次回はナックル再生向上オーバーホールのバルブスプリング編となりますが、そちらもぜひお待ちください。

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