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旧車の価値を落とすことなく、ナックルを“再生向上”させるサンダンス流オーバーホール術とは(その1)

1936年から1947年まで生産されたハーレー初のOHVモデル、ナックルヘッドですが冷静に考えても最終型ですら今から76年前のバイクゆえ、構造的・設計的に様々な問題を抱えているのは否めない事実です。
我が国、日本では近年のハーレーブーム、旧車ブームもあり、多くのナックルやパンヘッドが輸入され、ともすれば本国アメリカよりも登録台数が多いように見えますが、それらの中で本当の意味で “完調” と呼べるものが果たして何台あるのでしょうか?

たとえば旧車の消耗パーツを単純に交換し、それを良しとするレストアもありますが当社サンダンスの流儀は決してそうではありません。ナックルヘッドといえども構造的な問題を根本から見直し、旧車の価値を落とすことなく “再生向上” させ、ハーレーらしい鼓動感を強調しながら絶大な耐久性を与えることを身上としています。

ノーマル・ナックルの問題点、その一つにあるのがエキゾースト(EX)バルブとインテーク(IN)バルブのカサ径(外径)の大きさが同じ、ということ。パンヘッドもナックルヘッドもEX、INともにバルブサイズがΦ44.5となっているのですが、つまりはそもそもの設計上、インテーク側のバルブ径が非常に小さいのです。

ショベル時代にはインテークバルブのカサ部がΦ49に大径化されることによって吸気効率が向上。ガス交換がスムースに行われます。ナックル・パンの時代はそうした工学理論も確立されて(分かっていなかった)いなかったゆえ、どうやらこの部分が設計的におざなりになっていたようです。

そこで当社サンダンスではナックルやパンヘッドをオーバーホールする際、ショベルと同等サイズとなったオリジナルT-SPECハイフローバルブとし(HPではパン・ショベル用となっていますが当社での作業を前提にナックル用もご用意しています)、その上でラウンドシェイプのシートカットと併せることで、燃焼室への理想的な混合気の導入を実現するよう作業を行っているのですが、さらにT-SPECハイフローバルブはショベル時代のソレをさらに進化すべくインテーク側のバルブステムもEVOと同等のティン(細い)タイプを採用。これにはポート内の乱流が小さく、エンジン回転数が上がるにつれ、太いバルブステムと比べて抵抗も少なく吸入混合気がスムースに燃焼室へ送り込まれるというメリットがあります。ナックルに限らず旧車のオーバーホールで絶大な効果を発揮するのです。

上写真の左がショベル以前のモデルのINバルブステム、右がEVO以降のモデルのものとなっているのですが、ご覧のようにその違いは一目瞭然です。素人目には僅かな差に感じてしまうかもしれませんが、この違いがポートを磨く手間から得られる効果より簡単かつ確実に混合気の吸入導入をUPさせるのです。

このINバルブに対してEXバルブは従来どおりの “太ステム” としているのですが、これも当然意味を持ちます。フレッシュな混合気の導入によって冷やされているINバルブに対してEX側は常に排気ガスによって温められている為、出来るだけ太いステムで熱をヘッドに逃がしてやることが必要になります。よってEX側のバルブステムを細くすることはナックル等の旧いハーレー(鉄ヘッド)には適していないのです。

これらのようにパーツ、ひとつ、ひとつの役割の “意味” を考えればおのずと旧車のレストレーションの手法も解答が導き出せます。たとえばH-D社が現在の時代にナックルを生産するのであれば、エンジンの構造もショベル以降と同じようにインテークバルブを大径化するであろうことが考えられます。よりベストのものを求めるのが本当の意味での技術者です。

このブログでは当社のナックル再生術を今回のような連載形式でご紹介させていただく予定ですので、皆さま次回もぜひご覧ください。またこの内容を完全網羅し、紹介した書籍 “ハーレー・ダビッドソン ダイナミクス” も現在、絶賛発売中です(もうすぐ売り切れとのことです)ので、オレンジ色のリンク部分をクリックし、ぜひお求めください。

 

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