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XR1000に見る問題点と改善策、その1
過去の当ブログにおいて『オリジナルのXR専用“ノーブロークン”タペット』やインテーク側にティンステムを採用した『XR1000用スペシャルバルブ』、そして『浸炭焼入れSCM415鋼材製XR1000プッシュロッド・スペシャルボールエンド』などを紹介し、XR1000という車両の特殊性をお伝えさせていただきましたが、事実、当社サンダンスには全国から多くのXRの修理依頼や海外からのパーツお問合せが後を絶たない状況が続いています。
上の写真でサラっとその一部をご紹介させていただいてますが、当社サンダンスでは多い時に1度に15台前後のXR(スーパーXRは除く)がピットに入庫し、修理やチューニングを待つ状態になることがあります。
このように全国、いや全世界の皆さまから「XR、最後の駆け込み寺」としてサンダンスの技術をご評価いただけるのは大変ありがたいのですが、その分、当社へ持ち込まれる車両のほとんどが多くの問題を抱えていると言わざるを得ないのが現状です。
無論、そうした車両を完調にし、再びお客様にお届けするのが我々サンダンスの使命です。しかし、多くの方がご存じのとおり、じつは『XR』という車両は一筋縄でいかない難しさを孕んでいるのです。
1983~1984年の2年間のみラインナップされたこのモデルには、様々な問題点があることを当社サンダンスでは過去にも様々な形でお伝えしてきましたが、最初の年で1018台、翌年には759台が生産されたのみという台数の少なさから、その修理方法や対処法に「噂話」の域を出ないものが横行しているのも現状です。しかし、内燃機関や工業製品たるバイクでは欠陥部分の『明確』なトラブルの理由があり、正しい対処法が必ずあります。
今回からのブログではそのレクチャーや、T-SPECならではの改善チューニング法を数回に分けてお伝えしていく予定です。
まずこのXR1OOOやアイアンスポーツのエンジンで代表的なトラブル例にクランクピンのダメージがあります。これはEVOが登場以降もしばらく欠陥として受け継がれたのですが、その原因のひとつとして、まず材料そのものの問題があります。当時の純正素材は材料の密度が粗く、分子レベルで金属同士の結合が弱いゆえ、適材料としてはモロい傾向がありました。その欠点を熱処理によって補おうとした結果、熱処理硬化に頼りすぎた表面硬度となり、コンロッドからの衝撃打に耐えかね、表面粉砕が起こるのです。
さらにもうひとつ、クランクピンにダメージを与える要因に現在のガソリン事情があります。ハーレーの生産国であるアメリカと日本では、ガソリンのオクタン価に違いがあることを以前の当ブログでもお伝えさせていただきましたが、同じ100オクタン表記のガソリンでも日本のソレは米国に比べて、実際には6.5近くオクタン価が低いという現実があります。
ゆえに、そのガソリンオクタン価に合わせた適切な圧縮比の設定が必須となるのですが、過剰な高圧縮のエンジンは必ずクランクピンにダメージを与えるノッキングやプレイグニッションの原因となります。加えて冬場などであまりバイクに乗らない方の車両だと、タンクの中で古くなったガソリンのオクタン価がものすごく下がっているというケースもよくあります。こうしたガソリンによって体感できるかできないかくらいのノッキングが、知らず知らずのうちにエンジンにダメージを与えることが多いのです。
そうした症例の中で多く見られるのがベアリング形状に沿って大きくえぐれた形での摩耗や粉砕された状態です。
この症状は点火時期が適正より早く設定されていたり、先述したように高圧縮化されたエンジンの場合、ノッキングやプレイグニッション等のデトネーションなどによって更に容易に発生します。
またオイルを食っているエンジンの場合、カーボンが起因となる異常燃焼などをはじめとする複合的な原因も考えられます。
この解決策としてはチューニング用でリリースされている高密度、高強度のクランクピンに変更し、更にはトップエンドのコンディション(適正圧縮化など)を見直さなければなりません。社外のクランクピンはノーマルの1ホールに対し、2ホールもしくは3ホールのオイルホールを有していますが、これは満遍なくベアリングにオイル供給するという目的から備えられているものなのです。このオイルホールの数については諸説色々ありますが、あくまでも大切なのは材料及び強度に目を向けること。上写真にあるような複合的な要因によりガタつきが見られる純正クランクピンではなく、高強度かつ高精度なものを選択することもXR1000やアイアンスポーツを完調に仕上げる第一歩となるのです。
今回からXR1000という特殊性の高い車両の修理方法や改善を随時、お伝えしていきますのでユーザーの皆さんはもちろん、プロユースの方も参考にしていただけたら幸いです。





