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M8用クランクケース・カム軸穴・完全再生 “T-SPEC” スペシャルツールを製作しました!

1982年の創業以来、数多くの難修理を行い、ハーレーを改善してきた当社サンダンスですが、それを果たす秘訣にZAK柴崎が生み出してきたオリジナルの『治具』の存在があります。

たとえば、プロですらサジを投げ、どこからも修理を断られて再生不可能と思われる症例が当社サンダンスに持ち込まれることも珍しくないのですが、それを果たすのも上記で述べた『治具』ありき。これは簡単なものから複雑なものまで様々にあるのですが、それぞれの用途に応じて考案し、生み出されたものには製作者のセンスと経験が如実に現れます。つまり、この『治具』の製作もエンジニアと呼ばれる設計技師の腕の見せ所なのです。

無論、今回のM8(ミルウォーキーエイト)用クランクケース・カム軸穴・完全再生 “T-SPEC” スペシャルツールも然りです。

では何故、今回、この治具が必要となったのか? それはM8というモデルのエンジンが抱える根本的な問題があります。

これはEVOの時代でも見られた問題なのですが、カムベアリングの軸受けに破損が見られることが多くあります。理由としてはオイルの潤滑不足やタペットのクリアランスが大きすぎることが起因となる衝撃によってカムベアリングが粉砕するなど、様々に複合的な理由もありますが、ともかくバルブ4本を1つのカムで動かすEVOですらそうなのですから、8本のバルブを1つのカムで動かすM8の場合では、その掛かる負荷も尚更です。

ちなみに上の写真にあるのがM8における症例なのですが、ここもベアリングの粉砕によってカムの軸受けに破損が見られることがお分かりになると思います。ここを修正し、最終的にはベアリングをブッシュ化することで低フリクション化を実現し、強化改善するために開発に至ったのが今回のM8用クランクケース・カム軸穴・完全再生 “T-SPEC” スペシャルツールなのです。

上写真が、そのM8用クランクケース・カム軸穴・完全再生 “T-SPEC” スペシャルツールを使用して再生したM8クランクケースのカムの軸受け穴なのですが、ここからはその簡単な作業手順をご説明いたしましょう。

まずダメージを受けたクランクケースを治具にセットするのですが、装着のガイドとなるストッパーにピタリとハメれば、正しくリーミングが出来る位置となります。このストッパー部はベアリング軸穴に合わせて奥行が調整可能なのですが、それはクランクケースの母材までを削り取らない為に必要な措置。その上でクランクシャフト穴部分も下にある円筒状のロックで固定し、リーミングの治具をセットするのですが、構造的にも正確な作業を果たすことがお分かりになると思います。

ちなみにこの治具を製作する際、下の写真にあるとおり純正のカムプレートと同じ形状で切り出されているのですが、こちらを見ても正確な数値と形状であることは、どなたにもご理解いただけると思います。また治具のプレートにはノックピンも備えられているので、正確な位置決めが可能となっています。

そしてこの治具によって施工可能なものにカムの軸受けをベアリングからブッシュに変更する作業があります。

以前の当ブログで当社の強化ピックアップローターを紹介させていただいたのですが、それにしてもエンジン高回転時にカム軸受けのベアリングから発生する高周波の超音波によってノーマルのピックアップローターが破損してしまうことが理由のひとつとなります。これはベアリングによる接触打音がエンジン高回転時に高周波、超音波を発することが要因なのです。

もちろん、この治具は破損したカム軸穴のベアリングの受けを再生するのに有効なのですが、それよりも社サンダンスでは最終的にここをベアリングではなくブッシュ化することがベストであると考えます。

たとえばレーシングマシンのXR750はカムの軸受けにベアリングが採用されているのですが、メリットといえば「慣らし」を必要としないことだけに過ぎません。

無論、ここをブッシュ化すれば必然的に「慣らし」が必要となるのですが、オイルによってカムの軸受けがフローティング構造となるコチラの方がフリクション低減や接触ノイズの低減にもつながります。それは液体潤滑方式であるアイススケートと接触の回転運動であるローラースケートの違いをアタマの中で思い浮かべれば多くの方が理屈を理解できると思います。

それを果たせるものに今回、紹介するM8用クランクケース・カム軸穴・完全再生 “T-SPEC” スペシャルツールによる作業があるのですが、ダメージを受けた純正カム軸受けのベアリング穴再生はもちろん、ここを先述のようにブッシュ化し、カム側にCrNを施すことで、圧倒的な低フリクション化と静寂性、高い耐久性を果たすことは確実です。

たとえばローラースケート(ベアリング)は「常に接触して転がる」のに対し、アイススケート(ブッシュ)は「自ら膜を作って浮いて滑る」構造となっています。
だからこそ高回転・高負荷のカム軸には、油膜で浮かすフローティング(ブッシュ化)の方が、フリクションが無く圧倒的に滑らかでタフというメリットがあるのです。高回転域では、ベアリングの球体が転がる抵抗よりも、金属同士を非接触にする「油膜の滑り」の方が圧倒的にフリクション(摩擦抵抗)が小さくなります。更に言えばカム軸受けのフローティング化のメリットとして挙げられるのが、油膜のダンパー(クッション)効果による滑らかさであり、高回転になればなるほど油膜によってカム軸が真円を保って滑らかに回り、バルブタイミングの安定につながります。もちろん、ベアリングのような微細なゴロゴロした振動もありません。またベアリングの「点・線」での接触に対し、ブッシュは「面」全体で圧力を受け止めるゆえ、適切な油圧・油温が保たれていれば、理論上は金属摩耗がほぼゼロのまま回り続け、長寿命にもつながります。つまりカムの軸受けのブッシュ化は機械的にメリットしかないのです。

では何故、純正のハーレーのカム軸受けにはベアリングが採用されているのか? そこには大量生産の工業製品ゆえの精度の問題があります。構造の理屈としてはブッシュ化した方が良いのですが、この場合、カム軸と受けのケース側に正確なセンター出しが要求されます。それを果たすものこのM8用クランクケース・カム軸穴・完全再生 “T-SPEC” スペシャルツールの大きな役割です。

今回、ここでM8用クランクケース・カム軸穴・完全再生 “T-SPEC” スペシャルツールを紹介させていただきましたが、ご興味のあるM8ユーザーの皆さんはもちろん、この箇所の修繕や修理に悩みを抱いているプロショップの方もぜひ、お気軽にお問合せください。

今回のような治具の紹介により我々サンダンスの姿勢と技術力が少しでも伝われば幸いです。

 

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