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記録的な猛暑だからこそ考えたい根本的なオーバーヒート対策 その2 オイルについて
前回から『記録的な猛暑だからこそ考えたい根本的なオーバーヒート対策』というテーマでお送りしている当ブログですが、今回は大排気量の空冷エンジンであるハーレーには欠かせないオイルの話について、お伝えいたします。
前回はエンジンそのものの圧縮比の適切化についてお話させていただき、まずはその根本ありきというのが前提なのですが、やはり大排気量の空冷エンジンであるハーレーに於いて高品質なオイルと、その管理は絶対的に不可欠です。それは『オイルの役割』についてを改めて考えるとよく分かります。
当社代表のZAK柴崎による工学書、『ハーレーダビッドソン・ダイナミクス』のP300でも触れていますが、まずオイルというものに求められる絶対条件に以下の8つの項目があります。
①潤滑作用:金属部品同士の接触面の摩耗を低減し、円滑に作動させ、更には接触面を摩耗から守る役割
②応力分散作用:金属部品同士の接触面の衝撃を和らげ、破損しづらくさせ、更に振動やノイズを軽減させる役割
③冷却作用:エンジン作動時の燃焼熱や摩耗熱を流動的に吸収発散させ、オーバーヒートによるトラブルを防ぐ役割
④密封作用:ピストンリングから漏れる燃焼時の圧力を抑えて出力ロスを低減させ、ブローバイガスによるオイルの劣化を自ら守る役割
⑤清浄作用:ブローバイガスからのスラッジを溶解させて抱き込み、ケース内の付着を防ぐ役割
⑥防錆作用:ブローバイガス由来の酸物質を中和してケース内の各パーツの酸化や腐食から守る役割
⑦耐摩耗作用:潤滑作用と耐摩耗とは酷似しているが、作用として別もの。作動部位の摩耗を抑え、耐久性を向上させる役割
⑧清浄分散作用:エンジン内に発生するスラッジやカーボンなどをオイルに溶け込ませ、オイル交換時に排出させる役割
以上に記した中で③を見る限りでも、今回のテーマとなる『オーバーヒート対策』において、オイルが重要な役割を果たすということは明白です。
しかし、当然ながらハーレーのエンジンは空冷ゆえ、オイルそのものがエンジンの冷却のすべてを担うわけでもありません。あくまでも走行時の走行風によって冷却されるということは、どなたでも理解できるでしょう。
たとえばエンジンを冷却させるためか、オイルクーラーを2つも3つも装着している車両を目にしたこともありますが、それは空冷エンジンを冷却するという目的においては、むしろ逆効果と言わざるを得ません。走行時、風を当てるべきエンジンの前に、ある意味、それを遮る障害物といえるパーツを取り付けることはマイナスにしかならないのです。
このように、あたかもオイルクーラーを水冷エンジンのラジエターのような役割を果たすものと誤解している方も多いように思いますが、水冷エンジンのようにラジエター液がエンジン全体に巡り、それが冷却を担うエンジンと、空冷エンジンではいうまでなく根本が違います。あくまでも空冷エンジンはエンジンに当たる風が冷却を担う構造であり、炎天下の中、アイドリング状態で長時間、置いておけば、エンジンもチンチンに焼けてしまうのは言うまでもありません。
当社サンダンスでも過去にF-1のラジエターを製作するイギリスのメーカーと共同開発したオイルクーラーを販売していたことがあるのですが、高性能、高品質となった現在の化学合成オイルを使用すれば、じつは現在ではその必要性を感じないのが実状です。
特に当社がフランスのKENNOL社に特注し、販売しているSUNDANCE×KENNOL POWER TOURING パフォーマンスオイル 10W‐50や、さらにハイグレードなSUNDANCE×KENNOL SUPER SLICK 10W-50(当社でペール缶のみで販売)では、オイルそのものが絶対的な高性能を誇る上、熱劣化しづらいので、いたずらにオイルクーラーを装着する必要がないという結論に達しています。
では、なぜ以前は当社でもオイルクーラーを販売していたのか? その装着する意味を、改めて説明すると「オイルそのものを熱劣化させないために冷やす」という役割しかありません。その昔の鉱物油やさほど品質が良くない時代のオイルなら、それなりに効果もあったのですが、熱劣化しにくい当社のSUNDANCE×KENNOLオイルのような最高品質のオイルでは、ズバリ言って必要ないものであり、それと同時にオイルクーラーを装着した際のデメリットも知らなくてはなりません。
そのオイルクーラーのデメリットといえるものに「オイル自体が撹拌され、白く濁るような泡立ちが起こること」があります。まるでタマゴの白身をメレンゲにしたような体積の増えた状態のオイルがオイルラインの戻り側にあると、流れの抵抗や熱対策のことを考えても良かろうはずもありません。
そうした部分を解消すべく当社サンダンスではF-1のラジエターを生産するイギリスのメーカーに特注し、共同開発という形でオリジナルのフォーミュラークールオイルクーラーを販売していたのですが、やはりこれもオイルの泡立ちを抑える構造となっています。製品としては、まったく問題ないどころか、H-D専用として他に類を見ない性能を誇るものと自負していたのですが、現在の高性能、高品質なオイルでは必要性を感じないのが正直なところです。
基本、ドライサンプのハーレーの構造上、オイルクーラーは戻りのラインに取り付けるのが常なのですが、しかし、その(オイルクーラーの)抵抗によってオイルが戻らない、戻りが悪くなるという問題も生じます。つまりはドライサンプだとクランクケースの中にオイルがたくさん停滞してしまうのです。
たとえばハーレーのオイルポンプは送り側より戻り側のギヤの方が大きい構造となっているのですが、オイルが温まり、柔らかくなるとオイルポンプの隙間から圧が漏れ、オイルが上がっていかなくなるという症状がおこります。そうした行程を繰り返すうちにクランクケースの中にどんどんオイルが溜まり、ブリーザーからオイルを吹いたり、内圧が上がってオイルが漏れたりするのが持病とされています。
ドライサンプのエンジンの場合、オイルは出来るだけ早く戻すのが理想ですが、エンジンが温まり、オイルが柔らかくなると少しギアが傷んだオイルポンプだとオイルが戻らなくなり、距離を長く乗れば乗るほど、まるで借金が膨れ上がるかのようにオイルがどんどんと溜まっていくのです。そのオイルの帰り道の抵抗を出来るだけ減らしたいのにオイルクーラーがあると、それが抵抗となってしまうのは明白です。
では逆に送り側にオイルクーラーを付けると、どうなるかといったら、そもそも送り側のオイルは最低限の量になっているので、オイルクーラーのところでエアを噛み、吹かした時にオイルの泡がきたとしたら潤滑に対して凄く不利な状況となります。ゆえにドライサンプの場合、オイルクーラーは戻り側に装着するのが常になります。さらに言えば基本的にドライサンプはオイルタンクから来るオイルは戻り側より送り側の方が温度が低いので戻り側にオイルクーラーを取り付けるのが基本となっています。
話が脱線してしまうので、ここで「記録的な猛暑だからこそ考えたいオーバーヒート対策」に戻しますが、ともかくオイルクーラーが不必要であることと、その装着のデメリットはここまでの説明でお分かりになると思います。
実際、当社のレーシングマシンのデイトナウェポン“Ⅰ”も“Ⅱ”も上の写真をご覧になればお分かりのとおり、じつはオイルクーラーが装着されていません。しかもエンジン下にチンガードのようにオイルタンクが装着されているゆえ、どちらかといえばセミ・ウェットサンプのような設計となっており、最短の経路でフレッシュなオイルがダイレクトにエンジンへ送り込まれる構造となっています。1998年に鈴鹿8時間耐久レースを走ったレーシングマシンがこうなのですから、SUNDANCE×KENNOL POWER TOURING パフォーマンスオイル 10W‐50のような高性能な化学合成オイルを使えば、真夏の炎天下でもオイルクーラーを必要としないことがお分かりになるでしょう。
また日本車などに見られるウェットサンプはクランクケースがオイルに浸り、それがオイルをかき上げる構造となっているのですが、いわばこれはジャブジャブの『天ぷら油』のようなもの。ゆえにオイルをかき上げ、循環させるにはある程度、適切な量が必要なのですが、じつは、そのシステムがエンジン的には抵抗を生むものとなっています。それをあえてたとえるとプールの水の中でアシを動かす感覚とでもいえばいいでしょうか。対してハーレーに採用されているドライサンプは必要最小限のオイルが適宜でクランクに送り込まれる構造ゆえ、『厚焼き玉子を焼く敷き油』のようなものであり、オイルの品質がエンジンの性能に、より直結するものとなっています。さらにいえば、じつは4輪の世界などではウェットサンプよりドライサンプの方がハイグレードで有効なシステムとされているのです。事実、レースの世界で最高峰のF‐1エンジンではドライサンプが採用されています。
もちろん、そのオイルの性能を保つには圧倒的な濾過効率を誇る上、優れたオイル通過性と約3倍の濾過有効体積を誇る当社のマイクロクリーニング・ハイパーオイルフィルターが絶対的に有効です。これは50番相当のオイルがほとんど通過せず、抵抗としかならないH-D純正と異なり、まさにオイルフィルターとしての優れた性能を有しています。
今回はかなり長いブログになってしまったゆえ、ここで一旦、切り上げさせていただきますが、ともかく記録的な猛暑が続く今のような季節こそオイル選びと管理は重要な項目となっています。その中で何が「良いオイル」なのかの世界基準の条件を過去のブログでも触れていますので、そちらもぜひ改めてご一読ください。
全国的に「記録的な暑さ」と言われる今年の夏ですが、ともかく皆様、くれぐれも熱中症などに気を付けて水分、塩分を早めにとり、安全にバイクライフを楽しんでください。








