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またしても不適切な高圧縮比によるトラブル車両が持ち込まれました!

これまで当ブログで何度もお伝えしている『不適切な高圧縮化によるノッキング(プレイグニッション)によるトラブル』ですが、またまたクランクピンに大ダメージを負う車両が修理に持ち込まれました。

車両は2005年式のXL883を1200㏄にボアアップされたものなのですが、スポーツスター系で定番のチューニングではあるものの、こうしたトラブルが後を絶たないのも現状です。

その理由としてあるのが、やはり不適切な高圧縮化! スポーツスターの場合、883モデルのヘッド燃焼室をそのままで組付けた場合、ピストン上面がフラットなものだと圧縮比が11以上となり、市販ガソリンでの限界値を大幅に超えてしまいます。そもそも883より1200の方が燃焼室体積も14cc大きく、機種やグレード、年式で違う体積のモデルも存在する為、その都度、適切な計測とそれに合わせた燃焼室加工が必要となります。もちろんビューエルのライトニングヘッドやスクリーミンイーグル製ヘッドへの換装も然りです。

おそらくは、ただ市販のボアアップシリンダーを883に組み込み、それによるトラブルが頻発した為、H-D社も2007年頃からシリンダーに鋳込んである鋳鉄製スリーブの中央胴体部を肉薄に変更。ボーリング加工で883シリンダーを1200サイズにボアアップできなくなっています。

今回の883→1200へボアアップされた車両にしても、クランクピンのダメージはご覧のとおり。高強度のクランクピンも深く溝が刻まれ、ムシ食い状態になるほどのダメージを負っていることがお分かりになるでしょう。当ブログでこれまで何度も何度もお伝えしてきましたが、やはり高圧縮が原因のノッキング現象(プレイグニッション)による典型的な症状が見てとれます。

さらにはクランクのベアリングもご覧のとおり。本来、回転物をスムースに運動させるパーツであるベアリングが大きなダメージを負っていることがお分かりになるでしょう。

日本とアメリカのガソリンオクタン価が違うゆえ、ノーマルのTCやM8でもエンジンから「キン、キンッ」というノッキング音を感じている方も多いと思いますが、今回紹介した写真をご覧になってもプレイグニッションによるノッキングが、いかにエンジンにダメージを与えるかがお分かりになると思います。

そうした事例を数多く掲載し、それらがいかに危険であるかは現在、発売中の『ハーレー・ダビッドソン ダイナミクス(株式会社マガジンマガジン刊 定価3960円 税込)』でもお伝えさせていただいてますが、やはり不適切なエンジンの高圧縮化は百害あって一利なし! 日本でアメリカ並みのオクタン価のガソリンが入手できるならまだしも現実はそうではありません。ユーザーの皆さんはもとより、プロショップこそがそろそろ、こうした「エンジンの基本的な理屈」を知るべきであると我々サンダンスは考えます。

ちなみに『ハーレー・ダビッドソン ダイナミクス』に掲載している『空冷H-D V2エンジン圧縮比チャート』の日本国内市販ガソリン適応の圧縮安全値は以下のとおり。皆さま、このことを是非、肝に銘じていただきたいと思います。

 

 

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