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“計測”とチューニングの違いについて

前回、当ブログにおいて“カムタイミングの変更”と、その際に使用する治具について紹介させて頂きましたが、いうまでもなく、治具そのものがカムのパフォーマンスを変える根本ではありません。
エンジンの構造や混合気の流れ(フロー)、内部の摺動部にかかる摩擦係数など、様々な要素を理解した上で“道具を使う”ことでチューニングというものは成り立ちます。
たとえばカムタイミング変更の治具をはじめとする特殊工具やシャシーダイナモ、フローベンチなどの、これら“道具”は使い方や使う意味も分からないで所有していても意味がありません。

最近、当社サンダンスにも、あるプロショップの方から「フローベンチを購入したい」という相談を受けたのですが、よくよく話を伺ってみると「フローベンチを使えばフローそのものが上がる」と思い込んでいるように感じざるを得ない答えを聞くに至りました。しかし、いうまでもなくフローベンチとは、あくまでも“測定器”であり、機械そのものがフローアップしてくれるワケではありません。ポート形状や燃焼室形状、バルブシートの形状などフローアップする為の作業を行い、それに関するノウハウを勉強し、トライ&エラーを繰り返したものに対して「本当にフローが上がっているのか?」を確認する“道具”でしかありません。これはシャシーダイナモも然りで、測定しただけでパワーやエンジンのパフォーマンスそのものが向上するワケではないのです。

たとえばシャシダイ上でセッティングを出す作業にしても空燃比が理想とされる14.7:1になったとしても「本当にそれでいいのか?」を試す必要があります。たとえば空燃比にしても13:1や13.5:1の方がパワーが出たとしたら? シャシーダイナモへの負荷は? さらに言えば実走行の場合、その点火時期で合っているのか? などの様々な要素を考察する必要があるのです。たとえばシャシーダイナモ上でベストと思えるセッティングでも実走行と照らし合わせると点火時期が早すぎる傾向にあり、それが故障の原因になったりもします。
測定器であるシャシダイも正しく使わなければ意味はありません。「これだけ馬力が出た」と単純にシャシダイ上の数値をお客様に見せて喜ばれても、それがイコールで正しいセッティングとは限りません。
本当のパワー、パフォーマンスとは実走行時と同じように負荷を掛け、エンジンが完全暖機まで熱を持ち、走り続けている時と同じ状態で計測しなければ意味を持ちません(最低でも連続5,6回目に出た数値を計測)。
つまりはオーバーヒートの一歩手前で行うのが本当の意味でのセッティングです。そうしたことを理解し、正しく使わなければ“道具”も意味を持ちません。シャシダイを掛けることがイコールでエンジンの根本のパワーやトルクに繋がるわけではないことをご理解頂けると思います。たとえばダイエットをしている人が体重計に乗っても、自然に体重が減るわけではありません。あくまでも努力した結果を目で見て、確認する“道具”に過ぎないのです。これはシャシーダイナモにしてもフローベンチにしても同じことです。

たとえば神社仏閣を手掛ける宮大工の棟梁はカンナひとつでも10種類も20種類も持っていると聞きます。更に言えば用途に応じて、自分だけの特殊な道具を自作しているほどです。しかし、それも使い方や形状の理由が分からない素人の方が所有していても意味を持ちません。
最後に繰り返しになってしまいますが、前回のブログでご紹介したカムタイミングを変更する特殊工具やシャシーダイナモ、フローベンチなども然りです。シャシダイやフローベンチなどの特殊な工具を所有していると、あたかも、それらに対するノウハウまで付いてくると勘違いしてしまっている方もいるように見受けられますが、それらが直接的にエンジンのパワーやトルクをアップさせるのではなく、使う人間のノウハウこそが重要なのです。

 

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