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サンダンス・トラックテック開発秘話パート3 オリジナル・リアサスペンション開発の変遷

パート1ではデイトナウエポンⅡのライダーである匹田禎智選手にお話を伺い、『サスペンション開発者としての“ZAK”柴﨑評』を語って頂き、前回はフロントサスの開発についてお伝えさせて頂いた当ブログですが、パート3となる今回は、いよいよリアサス編に突入。サンダンスKYBが生み出された経緯についてをご紹介いたします。

過去を振り返ると’85年にオーリンズ製リアサスをショベル用としてワンオフで特注し、同時期から’90年代まではワークスパフォーマンスやホワイトパワー、そして’92年頃からサンダンス/クアンタムを開発し、販売してきた当社サンダンスですが、その変遷の理由は“ZAK”柴﨑曰く、「“より良いもの”を、常にお客様に提供する」という考えゆえ。
もちろん、これまでも、それぞれの時代ごとに“ベスト”と思ったものをサンダンスではチョイスし、オススメしてきたのですが、やはり日進月歩で進化するのが工業製品における技術というもの。そうした事柄に対して柔軟な姿勢で対応し、進化の歩みを止めないことも当社サンダンスのポリシーなのですが、サスペンションに関しても然りです。
たとえば1920年代のタイヤと現在のラジアルタイヤではグリップ力や強度も大きく異なり、性能に絶対的な隔たりがあることは多くの方が理解出来ると思いますが、サスペンションにしても同様。路面からの凹凸を単純に吸収する『バネ』が取り付けられていたオートバイ黎明期の時代と、ダンパーやプリロードアジャスターが取り付けられている現代的なものでは大きな違いがあります。

現在、当社サンダンスではフロントにNHKニッパツ社製のスプリングとKYB製オイルを組み合わせた“マルチレート・フォークスプリングキット”、そしてリアに“サンダンス―KYBリアショックアブソーバー”を推奨させて頂いているのですが、では一体何故、その解答に至ったのでしょうか? “サンダンス・トラックテック開発秘話”のパート1の匹田選手の時やパート2に引き続き、今回も当社代表である“ZAK”柴﨑の言葉をストレートに紹介いたします。

「これまでウチでは’80年代から様々なサスペンションを試し、使用してきたのですが、ここで本音を言ってしまえば”既存のものに不満があった”というのが正直なところです。たとえば、どんなメーカーのものであろうとレースで使用されるようなハイグレード・サスは往々にして素晴らしい性能を誇るのですが、しかし、それがストリート用となるとそうはいきません。コストや乗り味など様々な要因が重なり、必ず自分の思うベストとはかけ離れたものになってしまいます。サーキットという整地された路面でのレースという極限の状況ではレーシング・サスが素晴らしい性能を発揮することは言うまでもありませんが、しかし、それは必ずしもストリートでは該当しないのです。きっと多くの人がレーシング・サスを取り付けても、期待したものより”硬い”乗り心地に感じるのが現実だと思います」。


(写真提供:©バイカーズステーション編集部)

「更に言えばストリート用で一般的にリリースされているものがハーレーという重量車に適したものか? と問われれば残念ながら決してそうではありません。これはメーカーを特定するワケではないのですが、構造を見る限り、多くのものが他車種用の汎用品を”ハーレー用”として販売しているのが現実なのです」。

「そうした部分を考え、サンダンスでは’92年くらいからハーレー用として専用設計したオリジナルの”サンダンス/クアンタム”サスペンションを提供していたのですが、その当時は、オイルシールやオイル、シャフトなどサス・オーバーホールに必要な内部パーツも常に当社でストックしていたので安価に素早くオーバーホールが出来るというメリットがありました。しかし、それもモデルチェンジされる度にパーツが仕様変更され、オーバーホールが困難になるという問題が生じてきたのが正直なところです。それに対して国内のメーカーだと、オーバーホール用パーツなども法律的に何十年か保有しなければならない義務があり、ユーザーも守られています。しかも、そうした部分やコスト面、レスポンスを考えると国内メーカーが圧倒的に有利なんです。加えてKYBは多くの特許を持ち、優れた技術を有しています。それも我々がクアンタムから切り替えた理由の一つです」。

「以前にサンダンスで販売していたクアンタム・サス自体、他のメーカー品と比較してダンパーの特性が優れていましたが、細かいピッチングの動きに不満があったのも本音です。高速のハイスピード時に道路の細かい凹凸に対して反応が遅いゆえ、どうしても硬い印象になってしまいましたが、それに対応すべく追従性を求めてダンパーを緩めると大きな動きの時にサスが戻り過ぎてしまう。そうした部分を改善したのが『サンダンス/KYBトラックテック ネオロードホールダー リアショック』なのです」。

「この“トラックテック”を生み出すにあたって一連のレース活動で得た経験や知識が活かされているのは言うまでもありませんが、サスの性能を単純に推し量る方法としてリアフェンダーを上下に細かく押し、動きをチェックしてみるのも有効な手です。ゆっくり押したり、小刻みに押したりして色々な道路状況を想定してサスを上下に動かしてみると、サンダンス/KYBの細かいピッチングの動き、すなわち優れた路面追従性がどなたでもお分かり頂けると思います。レーシングサスのような硬さではなく、あらゆる条件の路面に追従するしなやかな動きがサンダンス/KYBの大きな特徴なのです」。

「またそれぞれの車種に合わせた専用設計である点もサンダンス/KYBの高い剛性を生む要因となっています。リアサスペンションはスイングアームの動きに連動して円弧を描くように動いているのですが、収縮の縦方向はもとより横方向からも応力が掛かります。他社の汎用型サスの場合、シャフト径が12㎜程度のサイズの上、結構長い構造となっているのですが、それをフロントフォークの構造に置き換えて考えてみるとインナーチューブが長くて、アウターチューブが極端に短いイメージとなります。そうしたものが高い剛性を確保していないことは明白です」。


(※他メーカー製リアショックのシャフト部分)


(サンダンス/KYBトラックテック ネオロードホールダーリアショックのシャフト部分)

「上の写真を比較して頂ければお分かりになると思いますが、それに対して一般的な汎用の社外サスペンションと比較するとサンダンス/KYBは必要なストローク分だけシャフトが出た構造であり、シャフト径も14㎜となっています。更に言えば強度を持たせながら良質なシール材を使い、フリクションも軽減されているのが大きな特徴です。一般的にハイパフォーマンス・サスといえばチッ素ガスとフリーピストン、オイルが別体リザーバタンクで装備されたものが多いのですが、先ほど述べたとおりサンダンス/KYBは必要なストローク分だけシャフトが出た構造となっているので、リザーバタンクは内蔵式を採用しています。こうしてヴィンテージっぽいスタイルでありながら中身は最新の構造(フリーピストン等)を持つサスペンションとなっている点も周知して頂きたいポイントです。もちろんサンダンス/クアンタムから買い替えの方には、特別に安価で提供しております。現実的なことを考えれば、ウチとしては損なのかもしれませんが、それよりも“より安全で楽しいハーレー”を提供することが、我々サンダンスの使命なのだと思っていますよ」。


(写真提供 ©クラブハーレー編集部)

※※※

今回のブログでは『サンダンスKYB ネオロードホールダー リアショック』の開発秘話を駆け足で紹介させて頂きましたが、このパーツが「スタイルと走り」を両立する当社サンダンスの理念から生み出されたものであることは多くの方にご理解頂けたのではないかと思います。
過去に様々なメーカーのサスペンションを実践的に試し、行き着いた解答が同製品なのですが、前後サスをバランスよく装着すればハーレーの走りを格段に向上させることが可能です。
また、これまで“トラックテック”を装着したお客様たちからは一様に「走りが楽しくなった」「フロントブレーキ重視でコーナリングのキッカケをつかみやすくなった」「走行時の車体が軽くなった」「車体の振動が軽減された」「何より乗り心地が良くなった」という数々の嬉しいコメントを頂いております。

ハーレーのチューニングと聞くとキャブやマフラーの交換やボアやストロークをUPし、排気量を拡大するなどのエンジンに目を向けがちですし、それはそれで面白いのですが、しかし、ハーレーも『オートバイ』である以上、足回りのスープアップも欠かすことが出来ない要素です。
ちなみに当社の『サンダンスKYB ネオロードホールダー リアショック』はアルミ削り出しボディの『プレミアムシリーズ』で税込み12万9,800円から、そしてフルカバードタイプの『トラディショナル・リアショック』で税込み7万4,800円で販売させて頂いているのですが、こうした価格設定は出来るだけ多くの方に「安全で楽しいハーレー」をお届けしたい我々の願いの表れとご理解ください。

次回はいよいよ『トラックテック開発秘話』の最終回となるソフテイル編をお送りしますので皆様、しばしお待ちください。

 

 

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