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サンダンス・トラックテック開発秘話 パート1 デイトナウエポンⅡライダー、匹田禎智選手に聞く

ユーザーの皆さんが安全で楽しいハーレーライフを送るためにルックスだけに終始しない『本物の機能と性能』を持つプロダクツやカスタム・バイクを生み出すこと……常日頃から、こうしたポリシーで業務を展開する当社、サンダンスですが、では「ハーレーのチューニング」と聞くとユーザーの皆さんは果たして、どのようなイメージをお持ちでしょうか?

たとえばキャブやマフラー、イグニッションなどを換装し、エンジンを快活にすることや排気量UPによってパワーとトルクを増大させることなど、多くの方が『エンジン・チューン』に着目しがちだと思いますが、しかし、ハーレーも『バイク』である以上、走りを語る上で欠かせない項目が『サスペンション』であることは間違いありません。
当社も2008年より足回りパーツを中心とした『Traktek』ブランドをスタートし、「直進安定性や路面追従性、コーナリング性能に優れたハーレー」を追求してきたのですが、今回のブログではその開発秘話をお伝え出来れば、と思います。

「ハーレーというバイクの極限での性能をレースというフィールドで追求し、そこで得た実践的なノウハウをユーザーの皆さんのストリート・マシンに還元する」。そんなポリシーの元、我々サンダンスは1988年より『サンダンス・レーシングプロジェクト』をスタートさせたのですが、その経験の中から生まれたのが『Traktek』です。
特にリアサスに関しては、これまでの過去でオーリンズやワークスパフォーマンス、クアンタムやペンスキーなど様々なサスペンションを試し、行き着いた解答が「サンダンス―KYB」なのですが、今回はそのサスペンションを開発するにあたって欠かすことが出来ない項目である「レース」という世界の中で、‘98年に出場した“鈴鹿8時間耐久レース”に於いてサンダンスの第一ライダーを務め、その後も『デイトナウエポンⅡ』を走らせる匹田禎智選手に「サスペンションのスペシャリスト」としての “ZAK”柴﨑についてを語って頂きました。


(写真提供:©チョッパージャーナル/ハードコアチョッパー編集部)

ちなみに匹田選手のプロフィールを簡単に紹介させて頂くと、

『1962年生まれ。18歳の頃から四輪でレース活動をスタートし、23歳からは二輪のレースに転向。SUZUKIやモリワキレーシングで活躍した宗利光氏による“宗レーシング”の一期生としてプロダクション(SPレース)に参戦を始め、’88年からはヤマハ初代のワークスライダーである野口種晴氏が運営する名門レーシングチームである“スポーツライダー“に所属する。以降、’89年には安良岡健氏が率いる“チームメイコー・ケンアラオカ”、国際A級に昇格した’90年からは城北ホンダオート(jha)を経て、’91年から自らのチーム運営とパーツ製作を行う「ヒリューレーシング」を設立。’93年よりHONDAからRS250の供給を受け、テストライダーとして足回りの開発にも参画し、’94年にはHONDA系サテライトチームとしてワークスマシンのNSR250の供給を受ける。その後、’95年からはイギリスの“グローバルレーシング”に所属。帰国後は“デイトナレーシング”からアプリリアで250クラスに参戦。その一連のレース活動の中で“鈴鹿8時間耐久レース”にもホンダ系ライダーとして多く参戦し、’98年にはサンダンス・レーシングプロジェクトの第一ライダーとして“デイトナウエポンⅡ”を駆り、“8耐”に参戦。2006~2007年にはデイトナウエポンⅡでバトル・オブ・ツインのF2クラスで二連覇を果たす』

というものなのですが、’93年のホンダRS250のくだりからもお分かりのとおり”開発ライダー”としても高い実績を誇る人物として知られています。


(写真提供:©チョッパージャーナル/ハードコアチョッパー編集部)

では匹田選手から見た“ZAK”柴﨑評とは、どのような印象でしょうか? その言葉は以下のとおりです。

「エンジンと同じようにサスペンションに関しても知識が高いというのが、僕の柴﨑さんに対する印象ですね。たとえば“アクセルを開けた時の車体の滑り出し”や“あのコーナーで何となくこうしたいんだけど”といったコチラのざっくりとした説明でも、的確なセッティングをしてくれるというか。こちらが思っている以上のことを応えてくれるんです。サスの内部構造や理屈はもちろん、きっと“何をどうすればこうなる”という部分での知識が深いんでしょうね。僕自身、’94年にサテライトとしてホンダ・ワークスからNSR250の供給を受けたんですけど、ワークスマシンってサスのセッティングの範囲内で出来ないことはないんです。市販レーサーと比較すると同じように見えても細かいトコがおそろしく違う。たとえば市販レーサーでイニシャルをかける1コマがワークスマシンなら1/8とか1/10でセッティング出来るんです。シールのフリクションなどもまったく違う。つまり普通のバイクでは出来ないことをワークスマシンでは出来るんですけど、デイトナウエポンⅡにしても同じ。細かなセッティングが可能なんです。でも、それにしても車体やサスペンションに対する知識がなければ“どういう方向性でセッティングすべきか”という明確な答えが導き出せません。僕の要望に対して的確な判断をして、正しいセッティングを出してくれる柴﨑さんとは深い部分でサスに関する会話が出来るんですね」


(写真提供:©チョッパージャーナル/ハードコアチョッパー編集部)

「サスペンションっていうのは、どんなバイクでもセッティング出来る許容範囲っていうのが決まっているんですよ。バネレートにダンピング、コンプレッションとテンション……バネの柔らかさとか前後のバランスなど、ベストを導き出すには様々な項目があるんですけど、そこら辺に関して柴﨑さんはコチラが思っている以上のことを的確に出してくれるんで。エンジンと同じようにサスというものの内部構造を知っているからこそ、“どうするべきか”という部分が分かっているんでしょうね」


(写真提供:©チョッパージャーナル/ハードコアチョッパー編集部)

「Aアームを用いたサクソトラックをフロントに備えるデイトナウエポンⅡの場合、かなり特殊な構造なので普通のバイクとは違うんですけど、“ヘビーな重量のバイクをスムースに動かす”という点では、どんなバイクでも同じ理屈です。このマシン(DWⅡ)の場合、まさにゼロからサスペンションを造ったといっても過言ではないんですけど、これもサスというものに対して深い造詣を持つからこそ開発が可能なんでしょうね。また普通のテレスコピック・フォークのデイトナウエポンⅠや市販車ベースのゴールデンボールズを走らせてみたこともあるんですけど、基本は同じ。出来の良さは遜色ないと感じましたよ」。

’98年の”鈴鹿8時間耐久レース”以来、デイトナウエポンⅡのライダーを務める匹田選手ですが、NSR250やRVFなどを走らせた経験と照らし合わせても「デイトナウエポンⅡのコーナリング性能はワークスマシンのソレと遜色がない」とのこと。極限のスピードでサーキットを走るレーシングマシンと、ストリートを走るハーレーでは”求める性能”が大きく乖離したものと誤解する向きもあるのですが、”乗り手が、どんな走りをしたとしても、それに対応する性能や安全性を追求すること”が開発というものです。

次回の当ブログでは、その開発者である“ZAK”柴﨑に話を聞き、サンダンスが開発してきたサスペンションの歴史や理念についてを深掘り出来れば、と考えています。どうぞお楽しみに!

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